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「私立学校の経営革新と経営困難・破綻への対応―中間まとめ―」(200677日)に対する見解
 

20061118

日本私大教連中央執行委員会

  「私立学校の経営革新と経営困難・破綻への対応―中間まとめ―」(以下「中間まとめ」)は、その「はじめに」に記載されているように、20055月に文科省が公表した「経営困難な学校法人への対応方針について」(以下「対応方針」)を受けて、20061012日に日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」)内に設置された「学校法人活性化・再生研究会(座長 清成忠男学校法人法政大学学事顧問)」(以下 再生研)の9回の議論を中間的にまとめたものである。

  再生研のテーマは「私立学校が経営破綻に陥った場合の社会的な影響の大きさに鑑み、私立学校の経営革新方策と経営困難・破綻状態に陥った場合の具体的方策について重点的に検討を行い、関係機関の役割と課題等を提示する」とされた。

  再生研の情勢認識では、経営破綻する可能性の高い経営困難法人がすでに幾つか存在しており、その法人の破綻処理についてソフトランディングできるようなスキームを、中間的に提示するというのが、「中間まとめ」の性格である。

  「中間まとめ」は、「対応方針」と比較して相当踏み込んだ問題提起をしている。
 

  「中間まとめ」の重大な欠陥の一つは、経営失敗の責任を経営者に取らせる仕組みを明確に提起しておらず、事実上経営責任を免罪するものとなっていることである。

 「私立学校の経営革新」(P6以降)で経営の一般原則を示したり、情報の隠蔽を批判したりと、従来のこの種の文書には見られない指摘がなされている。さらに「一般公開を義務化する方向で法的な措置を講ずることを検討すべきである」と、私立学校法より踏み込んだ提起もしている。

 しかし「経営者と教職員が一丸となって、教育内容を不断に見直し、時代が必要としている人材を育成する学部・学科へと改組転換を図るなど、柔軟に時代の流れに応じて組織体制を柔軟にスクラップアンドビルドしなければ、学校法人はこの厳しい時期を生き延びることはできない」とし、これらの判断をするのは経営者であることを前提としている。これらの正確な判断ができなかったことが原因となって経営困難に陥るのだが、この指摘は結局、経営者を免罪することになっている。

 経営困難な事態に陥れた経営者の責任をこそ追及するスキームが必要である。

  二つ目は、事業団が事実上、経営困難校の最終的な生殺与奪権を持つ仕組みとなっていることである。事業団が必要な「援助」をすることや「指導」を行うことは一定理解できる。しかし、そうであるならば、各学校法人の経営陣が外部のチェックを受けねばならないのと同様に、関与する事業団自身もチェックを受ける体制が併せて考えられねばならない。よって、情報公開ならびに事業団への外部役員参加など、事業団運営の民主化を、これまで以上に積極的に推進すべきである。
 

  「私立学校の経営困難克服と破綻処理」(P9以降)は、破綻前と破綻後の処理について、技術的な方法を含んで処理スキームを提案している。

  これらのなかに、「安易な人件費の削減は教職員の士気の低下を招く恐れがあり、教職員に対しても財務状況の説明を行い、協力体制を得つつ支出の抑制を図らなければ財務状況の改善は難しい」と、それのみを取り出してくれば正鵠を得る部分もある。

  しかし破綻前処理や破綻後処理は、ある種技術的な内容となっており、スキームをどう構築するかによって私学事業団や文科省の役割、私大助成のあり方がきまるので、スキームを構築する上での要素、考え方が重要になる。

  日本私大教連はスキームを構築する上で、以下の点が重要であると考える。

 1、経営政策に現場の声を反映する仕組みを

   経営政策は理事会専権事項であって、何人もこれに口出しすることはまかりならんという、横暴な姿勢が経営側に存在する。確かに経営者の責任と権限を明かにしたうえで、経営を司ることは一般的であり、そうであるからこそ我々も経営責任を追及することになる。しかし一般企業と違う重要な点が大学にはある。それは、大学が国民から負託された高等教育を実現する場であり、法の支配を受ける教育機関であり、私学助成という公的資金が投入されているということである。大学は、国公私立を問わず、公的な教育機関である。あたかも個人商店であるかのように、経営者(理事長)の勝手な振る舞いのできる経営の仕組みは正しくない。

   大学は、大学運営に学問の自由と大学の自治が担保されてこそ大学である。したがって、教授会をはじめとする教学機関による教育研究上の決定は、当然に尊重されなければならないし、そのような大学運営がなされなければ大学は死に体も同然となる。大学経営はこのことを当然の前提としなければならない。

  また私立学校法を再改正し、評議員会を諮問機関ではなく審議・決定機関とさせ、その構成員は利害関係人による公選制とすべきである。これは横暴な経営をチェックする機能をもたせるだけでなく、無策無能の経営陣をチェックすることにもなる。

 2、経営責任を明確に取らせ、利害関係人が経営陣をリコールできる仕組みをつくる

   我々の経験では、理事会が経営責任をとって自ら辞任した例は皆無といって良い。ほとんどの場合、開き直り居座っている。経営を失敗し経営困難に陥らせた経営者が、そのまま居座って引き続き経営の任を担うというのは悲劇である。

   私立学校法を再改正し、利害関係人が経営陣をリコールできる仕組みを作ることが必要である。同時に、そのような経営困難に陥れた経営陣の個人責任も、追及する仕組みをつくるべきである。

 3、経常費助成とは別枠の融資の仕組みを

   「定員割れ50%」で、私大経常費助成の対象外とする現行の仕組みは、変更すべきである。対象外とする仕組みを変更すると、経営者の安易な経営姿勢を助長しかねない、一種のモラルハザードに陥るなどとの意見を耳にする。しかし上記のように経営者に経営責任をきちんと取らせ、経営陣を一新する仕組みをつくれば、そのような懸念はなくなる。私大助成政策は、経営の再建を目指す方向に貢献すべきで、その際に、法人再建原資となるように経営困難校への特別融資の仕組みを構築すべきである。

 4、学生の学習権保障と学籍簿管理

   さまざまな手立てを尽くして、なお「レッドゾーン」から破綻に至った場合、第一に考えるべきは、学生の学習権保障である。その点では「中間まとめ」は明確に「学生の就学機会の確保」を挙げているのは正鵠である。

   「レッドゾーン」段階で学生募集の停止、学生が卒業するまでの間、教育を継続させ卒業後に学校を廃止することが最低限の基本的責任であるとする指摘は支持したい。

   同時に廃校後の学籍簿管理などの具体策を早急に確立しなければならない。

 5、教職員の労働債権の確保を

   経営の失敗によって労働債権の確保ができない事態は回避されなくてはならない。「レッドゾーン」段階で、賃金や退職金の未払いが発生する危険性があるが、廃止までの必要資金にはこれら労働債権を含むものでなければならない。
 

  高等教育政策への無限定な競争主義の導入は、弱肉強食的な大学間競争を煽っている。経営的に苦しい状態であっても、知の拠点として、また地域の学術の中心として努力し支持を受けている大学・短大は現に存在する。そのような大学・短大を励まし援助する仕組みを、破綻処理スキームと共に構築し、高等教育政策を励まし援助する方向へと転換することが求められる。

  そして事業団は、「励まし援助する」方向でその活動をすべきで、名の如く私学振興を図る機関としての役割を十全に果たすべきである。