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学校法人制度改善検討小委員会の「学校法人制度の改善方策について」に対する見解 = 私たちは学校法人制度「改革」の拙速な立法化に反対します=
2003年11月15日 日本私大教連中央執行委員会
1.経過について 文部科学大臣の諮問機関である大学設置・学校法人審議会(会長・丹保憲仁放送大学学長、大学設置分科会の会長を兼務)の学校法人分科会(会長・黒田壽二金沢工業大学学園長・総長)は、2002年10月7日、学校法人分科会運営規則第9条及び第10条に基づく特別審査会として、「今後の学校法人におけるガバナンス機能の強化等について検討」する学校法人制度改善検討小委員会(主査・高祖敏明上智学院理事長、以下「小委員会」)を設置しました。設置された直接的な背景には、国会でも追及された帝京大学の医学部不正入試疑惑事件がありました。また、2003年7月9日に青息吐息で成立となった国立大学法人法が、国会の法案審議で大学教職員をはじめとする多くの人びとの抵抗を受け、大問題となっていく時期とも重なっています。 小委員会は2002年10月30日に初会合を開き、2003年7月30日の第12回小委員会で「学校法人制度の改善方策について」と題する中間報告をまとめました。そしてこれについて私学関係団体等の意見を募集した上、9月29日の第14回小委員会で同名の最終報告(以下「報告」)をとりまとめ、10月10日の学校法人分科会に報告した後、これを公表しました。この報告は文部科学大臣に具申されたものではありません。しかし、文部科学省(以下「文科省」)は、2004年の春に招集される通常国会への私立学校法改正法案提出に向けて、その作業に着手しています。 報告は「1.理事機能の強化について」、「2.監事機能の強化について」「3.評議員機能の強化について」、「4.財務情報の公開について」、「5.その他の検討について」から成り、5を除くそれぞれについて「具体的改善方策」を挙げています。そのなかには首肯できる部分もありますが、以下に指摘するとおり「理事会権限の強化」という今後の私大・私学のあり方に関わる重要な問題点をもつ方策が主柱となっており、私たちはこれを見過ごすことはできません。
2.報告の問題点 (1) 民主的な意思決定の仕組みの破壊と理事会の専断的学園運営の強化 この報告の最大の問題点は「1.理事機能の強化について」の方策として、理事会が「学校法人の業務に関する最終的な決定機関としての位置づけを明確化する観点から、理事会を法令上に位置づけることが適当である」とし、「3.評議員機能の強化について」の方策として、評議員会は「学校法人の業務について理事会に対し意見を述べる諮問機関としての位置づけであることが原則であり、評議員会の議決が必要な場合であっても、学校法人としての最終的な責任及び権限は理事会にあることを明らかにする必要がある」とし、現在、法令上の諮問事項(私立学校法第42条)となっている予算、寄付行為の変更、合併・解散、収益事業や学校法人の業務に関する重要事項などについても、「それが妥当なもので、関係者の理解を得られるものか否かを確認する場として評議員会を位置づけることが適当である」と提案していることです。私立学校法第42条2項は、1項で定める法令上の諮問事項を「寄附行為をもって評議員会の議決を要するものとすることができる」と定め、そのようにしている学校法人も多くあります。報告が「評議員会の議決が必要な場合であっても」理事会は評議員会決定に拘束されないとしていることは、この提案のひどさを象徴するものといわざるをえません。報告では理事会を「最終的な決定機関」と法令上定めれば、理事会が「最終的な意思決定機関」になると述べて問題の所在を誤魔化しています。この提案のねらいは、@理事会を「最終的な決定機関」と法令上定め、A評議員会の性格を諮問機関に限定することによって、理事会が「最終的な決定機関」「最終的な意思決定機関」ではなく、学校法人における“最高の意思決定機関”とすることにあります。 現行のシステムでも例えば教員人事が教授会の決定を受けて理事会で確認され、理事長によって辞令等が出されており、理事会が「最終的な意思決定機関」となっています。したがって理事会が「最終的な意思決定機関」であるかどうかが問題ではなく、意思決定の仕組みをどうするのかが最大の問題であり、報告は民主的な意思決定の仕組みを破壊し、何者にも拘束されない強力な権限を理事会に与えるもので、現行の私立学校法の水準からも後退するものとなっています。報告は「当該意思決定が専断的にならないようにすることが必要である」と指摘していますが、これを担保する具体的提案はなにひとつありません。また報告は、学校法人に多様な意見を採り入れるために、当該学校法人の教職員ではない外部理事を任用できるようにすることが重要であるとしています。 帝京大学の事件に象徴される私立大学・私学の不祥事が後を絶たない最大の原因は、現行法においてさえ理事及び理事会の権限が相当に強く、教員・職員・学生・父母・卒業生などの声を無視する専断的な学園運営が可能となっていることにあります。私たちは外部の理事を全面否定するものではありませんが、公共性に反する非民主的な理事会を支えているのは多くの場合、権限を一手に握る者が押し込む同族ないし「当該学校法人の教職員でない」理事というのが実態です。こうした実態にメスを入れ、改善・改革するための具体的方策こそ法制化されるべきですが、逆に民主的な意思決定の仕組みを破壊することとあわせて、報告にはさらに重大な問題点があるといわざるを得ません。このことは、次に指摘する日本私立大学連盟(以下「私大連盟」)の主張を見ればいっそう明らかになります。 (2) 大学の自治を大幅に制約 国立大学法人法(以下「法人法」)が2003年7月9日に成立し、国立大学には学長に絶大な権限を集中させるシステムが導入されることになりました。私大連盟は、このトップダウンのシステムは学校法人制度を「凌ぐ」部分もあり、私立大学がこれに対応するためには、学校教育法第59条を改正して教授会を諮問機関とするよう明記すべきと主張(03.3.18「自律性の確立と自己改革<最終報告案>」)しています。 理事会は「学校法人の業務」を扱う機関ですが、報告は「2.監事機能の強化について」のなかで監査対象に関わって「(監査の範囲は)学校法人の業務の中心である学校の運営に関しても対象に含まれることとなる。個々の内容に立ち入ることは適切ではないが学部・学科の新増設や教育・研究における重点分野の決定、学生・生徒の募集計画等の教学的な面についても対象とすることがもとめられる」とし、「学校法人の業務」には「学校の運営」も含まれると述べています。 これらのことを合わせて考えると、理事会権限の強化は、教授会に対しても絶対的優位性を保持することとなり、私立大学における大学の自治は大幅に制約されることになります。学生の8割が学ぶ私立大学がこのような状況に陥ることは、日本の高等教育にとって由々しき事態といわなければなりません。 (3) 財務公開の流れを後退させかねない提案 財政公開については「4.財務情報の公開について」のなかで、財務書類の公開を“補助金交付の有無にかかわらず全学校法人を対象に法的に義務づけることが必要である”と提案しています。この点は評価できますが、重要なことは「公開を義務づける財務書類」の提案のなかで、「プライバシ−保護の観点等から、一般に公開することが適当でないと認められる情報については、公開しないこととできる仕組みを検討すべきである」としていることで、このような仕組みができれば財務書類の公開を「全学校法人」とした積極的な提案が無意味化するばかりか、これまでの財政公開の流れを後退させることになりかねません。公開の方法も閲覧を義務づけるだけで、財務情報の提供は学校法人の努力をもとめるにとどまり、しかも提供する情報の内容は各学校法人の判断によるとしていることも問題です。 (4) 提案されない内部監査制度の法制化 「5.その他の検討課題」では、会計監査について内部監査機能の充実にふれてはいますが、その制度を法定化することについては一言も言及していません。また、外部資金の導入方策や事務機能の強化と称してアウトソ−シング等を提案していますが、これは「学校法人制度の検討」という課題とは異なるものであり、その内容も「事務機能の強化について」という自ら立てた表題や私立大学の充実とは逆行するものとなっています。
報告は「はじめに」のなかで、「私立学校が今後とも健全な発展を続け、公教育の担い手として社会の要請に十分にこたえていくためには、私立学校法の精神を維持しつつ、学校法人の公共性を一層高めるとともに、自主的・自律的に管理運営を行う機能を強化するなど、時代の変化に対応して必要な見直しを行っていくことが重要な課題となってきている」と記していますが、報告で提案されている内容は、これについて誠実に検討されたものとは思えないものです。しかも、これだけ重要な問題をわずか12名の委員だけで議論していることも問題です。 評議員会を何の規制力もない諮問機関とし、理事会に絶対的権限を付与することは、報告が終始強調する「私立学校の公共性を一層高める」ことに反して、私学の公共性喪失の最大の要因である理事会の学園私物化、専断的運営を温存するばかりか、それに拍車をかけることは疑う余地がありません。 学校法人制度・大学制度の改革は、ユネスコの「21世紀に向けての高等教育世界宣言」(1998.10.9)が強調している大学の自治・学問の自由の保障を基底とし、さらには専門家集団としての大学人や教育関係者の民主的討論と合意を基礎に進められなければなりません。今日の私大・私学の実態を充分に分析することもなく、私学の教育・研究を直接担っている多くの教職員や専門家の検討を経ていないこの報告は、今日の私立大学が置かれている実態を正確に捉えておらず、したがってその提案もすでに指摘したとおり重大な問題点をもつものとなっています。 私たちはこの報告に基づく拙速な立法化に断固として反対し、文科省に対して私立学校法の改正作業を中止するよう要求するものです。 同時に私たちは、我が国の教育・研究に重要な役割を果たしている私立諸学校の公共性を真に高めるために、学校法人制度の改革についての議論を広く民主的に進めるよう強く要請するものです。 以 上 |