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『私大連盟経営委員会「学校法人の経営困難回避策とクライシス・マネジメント」』に対する見解 2002年4月28日 日本私立大学教職員連合 (社)日本私立大学連盟経営委員会は、本年3月19日に「学校法人の経営困難回避策とクライシス・マネジメント(最終報告)」(以下、『報告』という)を発表した。 1 「クライシス・マネジメント」が指摘する「大学危機の要因」は、それ自体「危機要因」ではない。大学危機の主要因は、高等教育の拡充と幅広い浸透を妨げている現在の教育政策にこそある。 『報告』は、@少子化による学生数の減少、A国立大学の独立行政法人化、及びB海外大学の日本進出を、いずれも大学にとっての競争的環境を強めるものとしてのみとらえ、私立大学にとっての危機要因と位置づけている。その上で「私立大学側における時代のニーズへの対応力の弱さ、状況の変化に対応するための大学改革の不十分さや緩慢さは、危機の時代における大学経営のあり方としては決定的な弱点となりかねない」とする。しかし@とBは経営的視点でのみとらえるべきものではなく、高等教育への国民的要求の実現、すなわちその普及、拡充の契機としてとらえることもできる。そうした要因を「大学の危機」へと結びつけているのは、直接的には我が国の高等教育に対する公的財政支出の抑制、削減、ないしは特定領域への重点配分といった誤った政策なのである。またAの動向は、国立大学における研究と教育に市場原理を導入しつつも管理の一元化と国による管理強化、及び独立行政法人の長の権限強化など、大学自治を省みない反民主的な「改革」と評すべきものである。大学人であれば、政府によるこうした、国民の高等教育へのアクセス権をないがしろにする政策をまず問題としなければならず、『報告』にみられるようにこれを単に競争的環境の強化として経営主義的観点からのみ捉えるべきものではない。 2 大学を―般企業に見立てた経営主義的乗り切り策の強調と、危機対応のためのリストラの促進は、大学における教育と研究の荒廃をもたらす。 『報告』は、危機回避のための予防策として、@社会や産業のニーズに応えるような研究・教育・人材育成のあり方を確立すること、A機敏に対応しうる大学の組織改革、B財務内容強化のための自前主義の全面的見直し―積極的なアウトソーシングの促進を挙げ、またこうした課題に取り組む理事者の経営的手腕を強調している。そして「大学危機」の時代に、「教育市場」の動向に即応できる「経営組織体」として大学を位置づけ、「経営感覚」に優れた理事会体制と監事・監査機構による業務評価システムを提起する。さらに監事には、当該法人と直接、間接の関連がなく、その職務にふさわしい資質を持った人物を選任すべきであるとする。だが、大学経営は「教育と研究の充実」と表裏一体のものであり、単なる「経営の論理」のみで考えられるべきものではない。大学における教育と研究の価値及び内容について、十分な認識を持ち得ない「経営」の専門家に大学経営のイニシアティブをとらせようというのであれば、経営効率を極度に強調する「経営主義」と断じざるを得ず、経営の名の下に大学における教育と研究を歪めることにもなりかねない。さらに『報告』は、競争的環境のなかでの「戦略的経営」の実行のためには財務体質の強化が不可欠とし、教員を含む「ヒト、及びモノ」の積極的なアウトソーシングを提起している。その内容は、「人件費の改善」、すなわち固定費を変動費へ移行させるための教員の終身雇用制の見直し、カリキュラムの自前主義の見直し提案にまで至っている。大学の業務のうちどの部分がアウトソーシング可能かは慎重な分析を必要としょうが、大学の重要な構成員であり、大学運営の担い手でもある教職員を財務的視点からのみ論じる『報告』は、大学運営と改革への協働者たる教職員への理解を欠いた全くの暴論であり、これでは『報告』がいうところの「危機回避」のための体制が形成・維持できるとはとうてい考えられない。 3 『報告』は、大学の組織・運営に関わる事項についての民主的意思形成の意義についての理解が不十分である。理事会による平常時からの情報公開と学内合意形成へ向けた民主的イニシアティブの発揮こそが、大学の健全な運営をもたらすのである。 『報告』は、理事会、監事、内部監査機構による効率的機能的な大学運営が、危機対応のみならず日常的経営においても重要であるとしている。監査機構の充実と情報公開の重要性を指摘している点は評価しうるものの、大学の構成員である教職員、さらには学生、学生父母等の位置づけが不十分である。 4 「危機対処法」における教職員との交渉−合意手続きは不可欠である。 具体的な危機対処法として、『報告』は、設置者変更、合併等に言及しているが、対処法決定の前提として、できる限り早い段階での教職員に対する説明、雇用に関わる交渉と合意は、法的にも不可欠であり、教職員組合への事前説明による了解を明確に位置づけることは雇用関係からして不可欠の前提である。『報告』はこの点を軽視しており、きわめて遺憾である。『報告』が末尾で述べているように、「教職員のすべてを含めて、社会に対して開かれた、そして地域社会に支持される学園づくりこそが最大のクライシス・マネジメントなのである」。日本私大教連は、この視点に立って現在の高等教育政策の問題点を明らかにしつつ、各地における民主的な学園づくりに引き続き力を尽くすものである。 以上 |