日本私大教連 は6月9日、今後編成される補正予算、来年度本予算に向けて、東日本大震災および福島原発事故で被災した私立大学の復旧や私立大学生・私立大学進学希望者の修学機会の確保、大規模災害防災対策の強化などをもとめて、文部科学省に要請を行いました。要請には文部科学省高等教育局私学部私学助成課の森田正信課長らが対応しました。

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201169

 

文部科学大臣

 木 義明 殿

 

                                             日本私立大学教職員組合連合

(日本私大教連)

中央執行委員長  押谷 一

 

 

第2次補正予算案等の策定に向け、東日本大震災および福島第一原子力発電所事故により被災した私立大学の復旧、私立大学生と進学希望者の修学・進学機会の確保、震災から生命・安全を守る大学の整備等を求める要請書

 

 311日に発生した東日本大震災は、東日本の広域にわたって想像を絶する甚大な惨禍をもたらしました。死者・行方不明者28000人以上、いまだに避難所生活を余儀なくされている人々は11万人以上にも及ぶと報じられています。津波の被害は青森から千葉にわたり、地震の被害も広範囲で、かつ度重なる余震が被害を拡大しています。福島第一原子力発電所による放射性物質の漏出はいまだ収束しておらず、移動を強制された人々は、安定した避難先すら決まっていません。地震・津波、原発事故によって家族・親戚、住居、仕事、田畑を根こそぎ奪われた人々の明日の希望は、まったく見えてきていません。

 こうしたなかで、震災対策(原発事故、風評被害も含む)は、従来の政策枠組みを超えた対応が求められています。津波をうけた土地の政府による買い取りやローンの減免などの踏み込んだ政策によって、生活基盤を確保し、新たなスタートができる施策が求められています。

教育についても、従来の政策では対応できない事態となっています。宮城県を例にとると、授業料無償化が実現している県立高校では、奨学金の申請者が急増していますし、授業料無償化が不十分な私立高校では、学費滞納者がいっそう増加することが予想されます。震災対応として、宮城県は奨学金について返済免除の方向で検討するとのことですが、家庭の深刻な状況のなかで、震災によって高校をやめなければならない生徒をなくすための踏み込んだ対応が求められています。

高校生の進学を受け入れる大学についての震災対策、特に私立大学についての震災対策は遅れています。今回の震災によって、多くの私立大学が施設・設備の損壊を受けただけでなく、学生・教職員が亡くなり、あるいは安否不明となっている大学も少なくありません。教育研究のための図書や研究機器等の破損は、教育研究活動継続を困難にしています。被害状況が甚大な地域においては来年度の学生募集活動そのものが困難な状態にあり、大幅な定員割れによる大学財政の悪化が懸念されます。さらに震災と原発事故による学生・家庭の経済的困窮により、多くの若者たちが進学・修学を断念せざるを得ない事態に陥ることが推察されます。

46日に成立した2011年度第1次補正予算では、「私立学校(専修学校等を含む)」の学校施設等復旧費として1,081億円(施設復旧643億円、私学事業団の無利子融資226億円、教育研究活動復旧費補助212億円)が計上されました。うち私立大学等の施設復旧費は338億円(大学約100大学、短大約20大学分)です。国立大学等の施設復旧費が第1次補正予算で256億円計上されていることに照らせば、これは極めて不十分な金額です。すでに東北大学は震災による損害額を770億円と算定し、全額、国による費用負担となります。私立大学の施設等復旧費も、国立大学と同等に全額国庫負担の扱いがなされるべきです。

今回の震災は、余震を含めて長期にわたり、大学構内には多くの学生がいました。私大理事者は建物・構造物の耐震性を確保する管理責任が問われることになりました。また首都圏も含めて避難所となる大学も多く、緊急物資の確保(最低三日間の水・食糧等)が十分でない例も多く見られました。こうした学生、国民の生命に直接関わる耐震工事や緊急物資の備蓄は、各大学の「自主的な」判断にまかせるべきものではありません。現行、私立大学等の耐震補強事業に対する補助率は二分の一を上限としています。全額国庫負担で行うべきです。

学生の修学・進学については、第1次補正予算では、奨学金の緊急採用の拡充に35億円(家計急変に伴う奨学金の緊急採用約4,700人)と授業料減免措置の拡充に41億円(国立大学等約1,400人・8億円、私立大学等約4,600人・34億円)が盛り込まれています。

奨学金については、依然として貸与制奨学金となっており、被災した学生に新たな借金を背負わせるという信じがたい政策となっています。被災した学生には、深刻な家計状況とは切り離して大学生活を保障するための給付奨学金の新設を急ぐべきです。

授業料減免措置の拡充については、私立大学学生数が占める割合に見合った、国立大学を上回る予算措置が講じられたことは大いに評価できますが、国立大学学生については授業料の全額に相当する予算措置となっているのに対し、私立大学学生については補助割合を3分の2と設定しています。被災した学生に対しては、国立大学と同等に全額補助とするべきです。

 今回の震災と原発事故は、ともすれば没社会的傾向を指摘されがちであった若者たちに、社会に対して何をなすべきかを考える貴重な契機ともなりつつあります。多くの学生が被災地にボランティアとして赴き、文部科学省もまた学生のボランティア活動を促進・支援するための修学上の配慮を求める副大臣通知(201141日)を各大学に発していますが、こうしたボランティア活動支援のための施策を積極的に推進するための予算措置が求められます。

 以上の点から、2011年度第2次補正予算案等の策定に向け、下記の施策実現のための予算措置を行うよう強く要望します。同時に、被災地域の現状把握は遅れており、文部科学省を例にとれば私立大学への被害調査アンケートは516日締め切りであり、その集計結果はまだ公表されていません。被災により修学困難に陥っている学生がどの程度に上るかの全容もまったく定かではありません。被災した人々が再スタートをきれるような生活基盤を確保し、一人ひとりが人生を選び取っていける権利を尊重できるよう、関連自治体や被災者の切実な要求に対応した予算措置を迅速に行うとともに、被災状況の全容に見合った十分な予算措置を行うことを強く求めます。

 

 

1 国公立大学と同等に、被災地にある私立大学が、施設・設備等と教育研究活動を復旧させるための費用を全額補助すること。

 

2 被災した大学生・大学進学希望者等(以下「被災学生等」)の進学・修学機会の確保のため、以下の措置をとること。なお被災学生等の「被災」とは、震災による直接的な被害にとどまらず、福島第一原発事故の影響による農業・酪農・漁業等への被害(風評被害も含む)によって家計が窮迫状態に追い込まれることをいう。

1)被災学生等に対する給付制奨学金の制度を新設すること。これが実現できない場合は、被災した奨学金貸与者に対する返済免除の制度を新設すること。

2)被災学生等に対する授業料を全額免除するための措置を行うこと。

3)前項(1)(2)の制度新設が遅れる、あるいは十分な予算確保が困難な場合の措置として、被災学生等に対して各私立大学等が自主的に実施する授業料減免や奨学金給付等の経済的支援に対する補助率を大幅に引き上げること。

 

3 被災によって収入が減少し日本学生支援機構奨学金の返還が困難となった者について、一定の所得を得られるまで返還を猶予する措置を設けること。

 

4 被災地の私立大学等の財政基盤を弱体化させないため、来年度以降の予算措置において私大経常費補助を増額し、以下の施策を講じること。

1)私大経常費一般補助で措置されている地方・中小規模大学に対する支援に加え、被災地の大学に対する支援を新たに措置し、補助の増額を図ること。

2)定員割れによる私大経常費一般補助の減額・不交付措置を停止すること。

 

5 私立大学等において、十分な耐震工事を速やかに実施するための施設整備費および耐震調査に必要な経費、また災害時に避難所として対応するために必要な緊急物資等の備蓄等に係る経費は、全額補助すること。

 

6 被災地支援のための学生ボランティア活動の促進のために、201141日付文部科学副大臣通知「東北地方太平洋沖地震に伴う学生のボランティア活動について」に記される各大学での修学上の配慮を求めることにとどまらず、文部科学省が被災各地に「学生ボランティア・センター(仮称)」を設置し、ボランティア活動に必要な知識・技術等の習得を支援する活動を行うとともに、被災各地の情報伝達と学生ボランティアどうしの交流の場とするよう予算措置すること。

 

以上